こちの画像はスリークォーターの右投手によく見られる回転方向が215°=1時30分のファストボールです。
投手の回転方向を知ることで、その投手にどんなポテンシャルが秘められているかが分かるようになります。
Rapsodo Pitching2..0(ラプソードピッチング2.0)の主な指標の一つに回転方向があります。回転方向はホームベースに対して投げられたボールの回転軸を基に算出され0°から360°のどこかに収まり、水平方向と垂直方向のみの値、つまり2次元方向だけで回転方向を定義します。
※ボールの回転軸の深さは考慮しません。
右投げオーバースローピッチャーが投げる4シームは地面に対して純粋なバックスピンの傾向にあり、180°-210°の間に収まることが多いです。回転効率が高く回転数が高いバックスピンのボールは重力に引っ張られずらいいわゆるホップ成分を多く含んだボールと言えます。
右投げスリークォーター投手が投げる4シームは210°-240°の回転方向の場合が多く、サイドスローだと240°-270°ぐらいに収まります。スリークォーターで投じられた4シームは回転方向が斜めに傾くため、回転効率と回転数が高い場合、右バッターに向かっていくボールになる傾向があります。サイドスロー右投げの場合、ボールの回転軸はホームベースに対して垂直に近くなるため、回転数と回転効率も高い場合、水平方向(270°の方向)により動くボールを投げられる場合があります。
上記で説明したことは、感がいい人はすでにお分かりの通り、アームスロット(腕の出所)によって回転方向は大きく依存します。つまり、言い換えればアームスロット(腕の出所)が回転方向を決定づけるということです。
Rapsodo Pitching2.0(ラプソードピッチング2.0)では回転方向は度数ではなく、下記のように1時から12時までの時間で表されます。
180°=12時
270°=3時
360°=6時
90°=9時
このようにラプソードピッチング2.0は回転方向を度数ではなく、時間で表記することで、コーチや選手にも分かりやすいユーザーインターフェースとなっております。
下記の2つの図はブレークプロットと呼ばれれ、2019年度のMLB右投手の平均変化量と回転方向を表した散布図です。
※それぞれ度数ベースと時間ベースで作成されています。
※水平方向と垂直方向の変化量はインチで表されています。
1インチ=2.54cm
180°=回転方向12時
360°=回転方向6時
270°=回転方向3時
90°=回転方向9時
アームスロットと回転方向が相関関係であることに加えて、さらに興味深いことが分かってきました。Driveline(ドライブライン)が独自に行った研究によると、同じアームスロット(腕の出所)から投げられたファストボールは、僅か30度までしか操作できなく、その他の変化球に関しても50°程度までしか操作することができませんでした。唯一例外だったのはスライダーで、原因はジャイロ度(軸の深さ)が影響して上手く回転方向を測定出来なかったためです。
上記の結果は、研究結果に関係なく、投手がある球種の回転方向を変更する場合、アームスロットを完全に変化させる必要があります。但し、熟練度が高い投手の場合、アームスロットの癖は改善しにくく帰って逆効果になる可能性があります。例えば、オーバースローの剛腕で知られるクレイトン・カーショーは垂直方向のボールを巧に操ることができますが、水平方向へよく動くボール(真横に動くシンカー)はアームスロットの観点から投じるのは困難だと予測できます。
投手のアームスロットをまずは判断してどんな可能性が秘められているのかを見極めることで、より現実的な目標が掲げられます。具体的な目標を掲げる第一歩として、ラプソードピッチング2.0を活用し平均の回転方向と、ブレイクプロットを参照するのが最も効率的でしょう。長期間に渡り収集したデータはコーチや選手が特定の球種を投じる際にどれだけ回転方向が一貫しているかを評価するのにも役立ちます。Drivelineの調査によると、MLB選手は1球あたりの速球の回転方向の振れ幅が約8°~10°の程度分散に収まっているのに対して、大学生選手の場合、回転方向の振れ幅は平均で12°近くあることが分かりました。
上記の研究が示す通り、回転方向の一貫性も重要な要素の1つであり、カレッジ選手よりもMLB選手の方が一貫した回転方向がある事実を考慮すると、回転方向の一貫性について注意深く観察すし評価する必要がありそうです。
また、自身が追い求めている理想の球種がある場合、投球練習中にラプソードで目標の回転方向を意識して練習するのも上達を早めてくれます。