球速がブレるのは機材のせい? スピードガンの“誤差”の正体

野球の現場で「この前より球速が遅い」「昨日はもっと速かったのに」といった声を聞いたことはないでしょうか。ピッチャーの投球速度を測定する「スピードガン」には、実は**意外と知られていない“誤差の正体”があります。

今回は、代表的なスピードガン「Stalker Sports 2」「Stalker Proシリーズ」「Pocket Radar」と、一般向けのガンのスペックと比較しながら、球速表示の信頼性を左右する要素について深掘りしていきます。

スピードガンの“正確さ”はどこで決まる?

Table of Contents

1. 周波数帯とアンテナの精度

スピードガンは「ドップラー効果(反射波の周波数変化)」を利用して速度を測定します。その際、どの周波数帯を使うかが重要です。

  • Stalkerシリーズは34.7GHz帯(Kaバンド)を使用し、非常に狭いビームでターゲットを正確に捉えることが可能です。

  • 対して、Bushnell Velocityなどの安価モデルは24GHz(Kバンド)以下の広めの周波数帯を使用し、測定対象が曖昧になりやすい傾向があります。

2. 対象を“追尾”するアルゴリズム

StalkerやPocket Radarの上位モデルには、最も速い目標物(ファストターゲット)を優先的に表示するロジックが搭載されています。これにより、後ろを走るキャッチャーの動きや手前の動きに影響されず、純粋にボールの初速を表示できます。

3. 測定位置と角度の影響

どんなに高性能な機材でも、測定角度がズレれば誤差は生じます。たとえば真後ろからの測定でないと、**「コサイン誤差」**により表示速度が実際より低くなります。

Stalker Proシリーズはこうした誤差に対して補正しやすい高度な測定モードが備わっており、誤差の発生を最小限に抑える設計です。

製品名 使用周波数 精度・特性
Stalker Sports 2 34.7GHz 高精度・プロ仕様でも使われる
Stalker Pro II 34.7GHz 超精密・複数ターゲット追跡対応
Pocket Radar 24.125GHz 持ち運び重視・やや誤差が出やすい
一般的なスピードガン 10.525GHz 安価で入門向け・誤差が大きい傾向

「球速が遅い…」その原因は本当に投手か?

球速が日によって異なるとき、選手自身の体調や環境要因はもちろんあります。しかし、実際には「スピードガンの性能」や「設置条件」による誤差がかなりの割合を占めていることも。

特に以下の条件では誤差が大きくなります:

  • スピードガンが横から設置されている

  • 距離が近すぎる or 離れすぎている

  • 安価な機材で他の動きを拾ってしまう

なぜStalkerがプロ現場で選ばれているのか?

MLB球団やプロ育成機関で採用されているスピードガンの多くは、Stalker ProシリーズまたはStalker Sports 2です。これは、以下の信頼性があるためです。

  • 高速応答:リリース直後の“初速”を正確に表示

  • ノイズフィルター:他の動きを除外

  • 広い測定範囲と柔軟な運用性:距離10m以上でも正確に捉える

  • 丈夫で高耐久:毎日の使用にも耐える設計

Pocket Radarはどうなのか?

Pocket Radarシリーズも、近年アマチュアからプロの育成現場まで急速に普及しています。

  • 小型軽量で設置自由度が高く、スマートフォンとの連携機能(動画+球速表示)が魅力。

  • 高速反応でブレも少ないため、特にアマチュアや育成世代に適しています。

  • ただし、環境によってはややノイズを拾いやすいため、使い方には注意が必要です。

まとめ:数字に振り回されず、数字を信じられる環境を

「球速が1~2km/hブレたから不調だ」と一喜一憂するのは、測定機材の特性や誤差要因を知らないからこそ起きること。

逆に、信頼できるスピードガン正しい測定環境を整えることで、数字が「選手の成長」を示す武器に変わります。

スピードガンは、ただの道具ではなく、数字を可視化する“証人だからこそ、使う機材とその正確さには妥協したくないのです。

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